【開催レポート】Artパワーランチ “Extra” 監督/押井守氏による特別講演

こんにちは。Art部デザイン企画チームの川口です。
5月31日に開催されたグリー社内勉強会~Artパワーランチ “Extra”(※)~にて、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「イノセンス」などの映画監督を務められ、今世界的に活躍されている押井守監督にご登壇いただきました。本日はその講演内容のレポートをお届けします。

ゲームを作って、みんながハッピーになる方法
~いいものを作って儲けるためには?
押井 守氏(映画監督)

押井 守氏の登壇風景

「監督やってる、押井と申します」という冒頭あいさつから始まった押井監督の講演は、監督ご自身の体験をもとにした制作哲学や価値観をご共有いただきながらのスピーチとなり、ときおりジョークも交え会場は活気に溢れました。

今回、押井監督にご依頼したテーマは、「ゲームを作って、みんながハッピーになる方法 ~いいものを作って儲けるためには?」というものでしたが、冒頭で「結論から言うと、制作側もお客様もともにハッピーになりお金も儲かる。そんなうまい処方箋は存在しない。」としながらも、監督ご自身の経験を踏まえながらどのようにしてそれに近い結果を生み出すことが可能か?また、そのための付帯条件などを、「映画製作」と「ゲーム制作」を対比させながら、『職業人の奥義と成功する作品の秘訣』について紐解いていただきました。

押井監督自身も「昔ゲームを4本作ったことがある。今でもゲームをやる。但し、インターネットではやらない(笑)」そうですが、ゲーム作りと映画作りは似ていて、どちらも「制作側とお客様の両方の満足を同時に満たすのは至難」と語りました。その理由は、「制作者としては理想通りの作品をつくりたいのに対して、お客様のニーズが異なる」から。但し、制作者が自分の願望を譲って作品を作るなどモチベーションがあがらないし、けど「たまには当てたい(笑)」。(会場:笑)

「職業人は、『努力が報われないことに対してどう耐えるか』ということである。」
と説明する監督。失敗と成功の両方を知っているからこそ語れる監督としての深い考察の中から、ゲームクリエイターにとっても共感できるところが多く、貴重な学びとなりました。

「監督は自分の信じたこと、面白いとおもったことしかできない。自分の好きなことをやる。」
と自身の信念を明かした押井監督に感銘を受けました。

最後に、「みんな(制作者とお客様)が同時にハッピーになるのは不可能と言ったが、実は、ある『付帯条件』が揃うとそれが実現できる可能性がある」とし、その条件を教えていただきました。

  1. 自分にない才能を持ち合わせる他人と組んで作品を作る
  2. 作品がシリーズものであること(その中で、お客様の快感原則をコントロールする)
  3. 代替不能性

特に3つ目の「代替不能性」については、「代替えが不可能な存在である、と思わせること」であり、「これは人においては、言葉を語ることによって得られるもの。自分の発明した言葉の中で生きられること。」そう話される押井監督の人間的な魅力は、そこから出ているのだ、と納得しました。


質疑応答タイム

Q: 監督業・クリエイターとして大切にしている事をそれぞれ教えてください。
A: 代替不能と思わせることに成功するかどうか?ということ、そして、自分にない能力を持っている人間を見つけて一緒に仕事するということです。
Q: 作品を制作するチームメンバーを集めるうえで、監督が重視する点や、多くのスタッフとのコミュニケーションをとるための秘訣を教えてください。
A: やりたいことをやらせること。自由裁量権を与えて、自分で考えさせること。スタッフの手足だけでなく脳みそも使う。そして、スタッフを注意深く観察する。「見られている」と思わせることが大事。
Q: 自分の金で映画を何本か撮りましたが、会社のお金で映画が撮りたいです。何かいい方法はありますか。
A: 自分の原資で売り込み映画を作るのは1~2年で良い。完結しなくてよいのでサンプルを作って、どういう表現ができる人なのか?を知ってもらえれば十分。あとは、お金をもらって勉強しなさい。実際に映画を作るしか上手くなる方法はない。お金をもらうということは、評価する人間がいるということ。その環境で初めて技になる。そのために日々訓練(練習とは違う)することが大事。
Q: 明確なゴールが見え難い作品作りの中で「完成」とする判断基準を教えてください。また、監督独自の判断基準もお持ちでしたら教えてください。
A: 納品期日。それ以外はない。締切のない仕事は仕事じゃないと思っている。ゲームも映画作りも同じで、いくら作りこんでも終わりはないから。じゃないと次の仕事ができない。次の仕事がしたいからこそ、監督の責任として余裕をもって納期を決める。

会場の模様

押井監督、素晴らしいご講演を本当にありがとうございました!

Author: haruka.kawaguchi